300km/hを出せる車にする
っていうのが最終目標なのは変わらない。ギア比を変更することが実質的に無理な関係で、現実的な線は最低400馬力、8000レブのエンジンを作ることだと考えてた。
そのために基本設計にいくつもの懐疑点があるカレラ系のM96を捨てて、シボレーLSを高回転化する方法がベストだと考えてた。
だけど風向きが変わってきたという話。
クロスプレーンV8のドロドロした音がイマイチ好きになりきれなかった僕は、ずーーーっとM96で行く線を捨てきれずに調べまわってた。
そんな時にLN Engineeringがクローズドデッキのシリンダーを販売していることに気づいたんだよね。これ、前見たときは間違いなく無くて、明らかに最近販売開始された感じ。しかも以前からクローズドデッキ化に成功していた英Hartechのものとは形状が違うオリジナル品。
Hartechはイギリスにあるので、出来ないことはないけどちょっと輸送関係が難しそうだったのが、米国となれば話は違う。かなーーーり個人輸入もしやすいし既にルートが確立されてる。しかもシリンダーブロック単体で売ってくれるのが最高。
しかもM96で8000回るエンジンはすでに世に出てる。FlatSixInovation(FSI)が組むコンプリートエンジンの一部は8000対応である。
ここで冷静になって考えると、LSスワップにより魅力があるとは言えなくなってきた。
まずトルクの問題。
というのも純正ミッションは許容できるパワーが大体600馬力らしい。ってことから考えると許容トルクも似たような600N/mかと思われ。
つまりどんなベースエンジンを積もうが600馬力&600N/mで打ち止め。
問題はトルクでLSをベースにしたとき許容トルクに余裕が全く無いか、もしくはほぼ無くなってしまう。許容トルクギリギリでなんて運用したくはないので、そう考えると平気で6000ccあるLSをベースにするのはミッションの耐久性的に厳しい。
続いてLSエンジン自体の問題。
そもそもLSで8000回すのはハードルが高い。なんだよじゃあなんでLSスワップを考えてたんだよって話になるが、ハードルが高いだけで不可能ではないし、各種部品も豊富でメンテナンス費が抑えられるというのが大きかった。
ただ現実的には8000回せるLSを作るのは難しいかもしれない。なにせLSの生みの親、シボレーが作る量産LSシリーズのうち、最も回るLS7ですらレブは7000なのだ。
8000回せるLSというのは、LS3ベースで4.8のクランクを流用した5.66L仕様のことを言うのだが、果たしてこいつを日本で正しく組めるかというと、ちょっと難しいかな?と思うようになってきた。
というのもLSは近代的な形式のエンジンとは言い難く、前時代的な1カム16バルブのV8である。バルブはすべてプッシュロッドとロッカーアームを介さなければならない関係上、これらを精度高く組めるビルダーが日本に居るか…?そもそも精度高く組めたとて、安心して回せるだろうか、と。
居ないことはないんだろうけど、ちょっとリスクを取りすぎかなと思うようになってきたのだ。元来6000半ばがレブのLSを8500まで回せるようにするチューニングは素晴らしいと思うが、(LSスペシャリストが組むならいいが)日本でやるには技術的難易度が高すぎないか?と思うようになってきた。
さらに費用面の問題もある。
日本で8000まで回せるLSを組んで車検まで取ろうと考えると、どう考えても600~700万くらいはかかると思う。単純にスワップするだけなら400万位でも出来るかな?って感じなのだが、そこにエンジンのビルドも含めるとこうなると思う。
ちょっとコスパ悪すぎないか?
それならM96をOHがてらクローズドデッキの4Lエンジンにして、ハイカム積んで8000回せるビルドを組むほうがはるかに低コストでかつ実現性も高いと思う。M96はOHだけなら200~300万(某ショップのコンプリートエンジンでさえ300万でお釣りがくるらしい)っぽいので、OHの際に色々仕込めば遥かに実現性高く、コストも抑えて300キロマシンを作れそうである。
なんならM96だって元々7300のレブ(あの設計で、である)であることを考えると、シリンダーを強化してバランスよく組み上げれば8000だったらなんとか許容できるラインな気もする(実際FSIがそういうエンジンを売ってるわけだし)。日本国内でもM96系の修理やリビルドはある程度数もこなされている現状を考えると、M96を精度高く組み上げるほうが良くないか?
っていうような思考実験の結果、LNの4Lクローズドデッキシリンダーを使った8000レブ仕様をOHの際に組むってのが現状の答えになった。
そこにLSの大排気量がもたらすトルクや、プッシュロッドを高回転で回す不安はいらない。っていうのが今の答えだ。
※1とはいえM96のベースの設計の悪さは明らかで、水平対向なのにクランクがクランクケースに直接支持されていなかったり、シリンダースタッドボルトが不等間隔に設置されている等、大パワーに耐えうる設計ではないことは明白である。しかしながら、NAで400馬力程度なら問題ないかと思われる。なんなら加給して500出しても大丈夫だろう。実際500弱出せる過給機キットが出てるわけだし。そもそも996のM96だってX51バリアントのカレラパワーアップキットを組んでいれば345馬力になるわけで、パワーに負けて壊れるっていうことはなさそうである。
※2クローズドデッキ化に伴う冷却性の低下は元々冷却性能が厳しいM96では看過出来ない問題であると思われ、EWPの投入や完全なドライサンプ化も視野に入れる必要があるかもしれない。最低でもEWP付けて温度管理は必要に思う。